北陸新幹線E7系・W7系の最上級車両グランクラスに乗って東京-金沢間を移動しました。実際に体験してみると噂に違わず最高の乗り心地とサービスでした。車内の紹介と乗車記です。
目次
グランクラストとは
グランクラスは、東北新幹線E5系に初めて導入された座席で、グリーン車よりも更に上のグレードとなるクラスです。飛行機のファーストクラスに相当します。北陸新幹線E7系・W7系にはグランクラスが開業時から導入されています。
グランクラスの東京-金沢間の料金は、乗車券込みで26,970円。同区間の指定席が14,120円(繁忙期は+200円で14,320円)なので、その差額は12,850円。およそ倍の値段となっています。ANAの国内線プレミアムクラスが+9000円、JALの国内線ファーストクラスが+8000円(羽田-小松便は無し)であることを考えても、料金は高めです。チケット購入方法については、通常の切符と同じくe5489などのネット販売や、みどりの窓口で購入可能。乗車には乗車券とグランクラスの特急券が必要です。
E5系はやぶさのグランクラスの入口。E7・W7系とはまた違った雰囲気です。2016年開業の北海道新幹線H5系もこんな感じです。
グランクラスがある新幹線
北陸新幹線で運用しているE7系・W7系にはすべてグランクラスの車両がありますが、利用できるのは「かがやき」「はくたか」「あさま」のみ。金沢-富山間の「つるぎ」では、グランクラスは連結しているものの、利用できません。また「あさま」や、一部の運行区間が短い「はくたか(金沢-長野間)」はアテンダントは乗車せず、シートのみの営業。軽食やドリンクといったアテンダントが行うサービスはありません。
ちなみに、「かがやき」「はくたか」「あさま」「つるぎ」はすべてE7系・W7系という同じ車両を使用しています。金沢→東京間を「かがやき」として運行してきても、東京→金沢間を「はくたか」として金沢に戻るといった、ごちゃまぜな運用をしています。
また、E2系で運行する8両編成の「あさま」はグランクラス自体ありません。長野新幹線開業時から運行してきたE2系N編成も残り4編成、近いうちにE2系N編成はすべて退役します。
E7系・W7系のグランクラスは先頭車両の12号車(金沢側)です。座席の数に合わせて、窓の数が少なめです。
こちらは1号車(東京側)。普通車なので座席数が違います。そのため、外から見ても12号車と窓の数が違うのがわかると思います。新幹線の1号車と12号車の向きが変わることは絶対に無いので、東京発-金沢行ではグランクラスは一番先頭の車両。金沢発-東京行きでは一番最後尾の車両になります。
東京駅から乗ってみる
ホームの乗車位置案内も特別なものに。これは東京駅です。ちなみに空港のようなラウンジは特にありません。追記、2015年12月21日、東京駅にグランクラス乗客等が利用できるラウンジが開業しました。
今回乗車するのは、東京20時12分発、金沢23時11分着の「はくたか577号」です。はくたか号東京発金沢行きとしては、最終列車になります。
終点の金沢に行くなら「かがやき」を使用したほうが断然早く付きますが、グランクラスのシートを長く体験したかったので、あえて停車駅の多い「はくたか号」を利用します。「かがやき」の所要時間は2時間半ですが、「はくたか」では3時間~3時間20分ほどの乗車時間になります。「かがやき」と「はくたか」ではグランクラスのサービスに違いはありません。途中の停車駅と所要時間が異なるのみです。飲み放題の時間が長くなると思えば、「はくたか」のほうがいいかもしれません。
車両はE7系F6編成でした。E7系とW7系の違いは、製造番号か車内メロディくらいです。チャイムが「いい日旅立ち」「北陸ロマン」ならJR西日本が保有するW7系、上越新幹線と同じメロディならJR東日本が保有するE7系です。車両の見た目やグランクラスのシート、内装は全く同じ。どちらの車両で運行するかは事前にはわかりませんが、鉄道マニアじゃない普通の人間は意識する必要は全くありません。
金沢発-東京行きとして東京駅に到着した車両の清掃作業が行われます。
グランクラス12号車では、このようにドリンクなどが入ったカートの入れ替え作業が行われます。アテンダントさんも交代します。
乗車開始
清掃作業が完了。ドアが開きます。それではグランクラスに乗車します
乗車方法
グランクラスの乗車方法は、通常の指定席と違いはありません。特急券に書かれた座席に座るだけです。車両2箇所の入口では、2名のアテンダントさんが出迎えてくれます。
乗車時にグランクラス乗車券のチェックや提示などは特にありませんが、他の指定席と同様に車掌さんが端末できっぷ販売状況と客席の様子を確認しています。
グランクラスの車内
車内は、漆塗りの深い色彩を取り入れた、落ち着きのある空間です。グランクラスの座席数は18席。広さが違うとはいえ2号車,4号車,8号車,10号車なんかは1車両に100席も入る中、贅沢な配置です。
今回乗車したはくたかのグランクラスには、乗客は5人しかいませんでした。開業初日のニュースのためか、グランクラスは座席が取りづらいというイメージがありますが、平日は割りとこんな感じだそうです。
A席が1列、B席C席が2列シートです。A席は日本海側、C席は立山連峰側です。グランクラスのシートは、普通車やグリーン車のクロスシートのように、乗客が自由に座席を回転することはできません。
グリーン車・普通車
E7系・W7系のグリーン車がこちら。グリーン車は2-2なので、グランクラスは更にゆったりと使用できます。
こちらは普通車
シート
2列シートには、間にパーティションがあります。
1号車~11号車にはセミアクティブサスペンションが搭載されていますが、グランクラスの12号車には更に揺れの少ない「フルアクティブサスペンション」が搭載されています。乗り心地が段違いに違います。またグランクラスの12号車と、同じく先頭車両の1号車の台車にはモーターが付いていないので、加速時のモーター音が無く大変静かです。
よく言われていますが、鉛筆ぐらいなら立ちそうな感じです。手元に鉛筆が無かったので小銭で試そうとしましたが、さすがに小銭は立ちませんでした
天井の照明
LED表示器。グランクラスが自由席になることは無いので、自由席・指定席の表示はありません。また、グランクラスに限らず全車両禁煙です。デッキ・トイレを含めたばこは吸えません。
参考 普通車
床には赤い絨毯。
頭上の荷物収納棚は、飛行機のようにカバーが付いています。忘れ物が無いか確認しやすいよう鏡もあります。乗客の数が少ないので、収納スペースにも余裕があります。
前の棚にはブランケット。ブランケットやアイマスクといったアメニティはアテンダントさんに頼めば利用できます。
窓のサイズは普通車と同じですが、窓枠の作りのせいか広く感じます。
ブラインドをおろしてみました。
シートは革張りで高級感があります。
この座席はレクサスのシートを手がけるトヨタ紡織が開発・製造しています。トヨタ紡織とE7系・W7系を設計した川崎重工のロゴ。
ちなみに座席1つのお値段は300万円とのこと。1車両に300万円×18席が並びます。
全席、コンセントがあります。E7系・W7系は普通車でも全席コンセント搭載です。
シートの案内
電動シート操作方法
リクライニングはすべて電動。背もたれ、レッグレスト、座面角度のボタンの他、アテンダント呼び出しや読書灯のボタンがあります。
リクライニングをすべて倒すとこうなります。最大45度。枕の高さも上下できます。国際線ビジネスクラスのようなフルフラットにはなりません。
元々シート自体に傾斜があるので、後ろの乗客に全く気を使うこと無くシートを稼働させることができます。ぐっすり寝れそうですがせっかくのグランクラス、いろいろ堪能したいので眠気を堪えます。
読書灯
GranClassのロゴが描かれています。
A席の足元。JR西日本とJR東日本それぞれの冊子、スリッパが入っています。
B席C席の足元。前の座席下のスペースはシューズボックスです。
アメニティ
スリッパ。持って帰れます。袋にはグランクラスのロゴ。
2013年12月14日に金沢駅で行われた「グランクラス先行体験イベント」で、シートだけなら体験済みですが、全く同じでした。
アテンダントさん
東京駅を出発してすぐ、アテンダントさんが挨拶と自己紹介に訪れます。ひとりひとりに対して、丁寧に対応されていました。
おしぼりが配られます。厚手のしっかりとしたものでした。
軽食のメニュー
ひじ掛け下の小物いれには、メニューが入っています。
ダイニングテーブルを引き出して、メニューを確認します。JR西日本・東日本のマーク。アテンダントさんが所属するのはJR東日本の子会社NRE 株式会社日本レストランエンタプライズとなります。
英語も併記
軽食は、「和食」「洋食」から選択できます。飲み物は、「アルコール」「ソフトドリンク」すべて降車時まで飲み放題となっています。
食事
上野駅を過ぎてから、軽食が運ばれてきました。
今回は和食を選択です。ちなみに洋食はサンドイッチとなっています。
和食メニュー。和食は、上りと下りでメニューが異なります。上り(金沢発東京行き)は北陸の食材を使った北陸編。下り(東京発金沢行き)は東京の食材を使った東京辺です。なのでこちらは東京編。東北新幹線では東北の食材になります。
長野県産鶏肉照焼、ぶなしめじ黒胡椒炒め、はすの実串薄衣揚、いわし磯辺揚、豆腐田楽 下仁田ネギ入り味噌、桜麩、汁なしのっぺ、季節御飯
飲み物
最初のドリンクも運ばれてきます。飲み物のメニューは
アルコール:ビール、ワイン(赤・白)、日本酒、加賀梅酒スパークリング
ソフトドリンク ホット:コーヒー、緑茶、ハーブティー
ソフトドリンク コールド:コーヒー、アップルジュース、緑茶、ダイエットコーラ、黒烏龍茶、ミネラルウォーター
となっています。すべて飲み放題。前記した通り、グランクラスの車両は揺れが少ないので、快適に飲食を楽しめます。
加賀梅酒スパークリング。グラスにはグランクラスのロゴ。
あくまで軽食なので、それほど量は多くありません。大宮駅到着前には食べ終わってしまいます。ドリンクは飲み放題ですが、軽食は食べ放題ではありません。グランクラスではワゴン販売がありませんので注意(アテンダントさんに申し出て購入することは可能)。別途事前に駅で駅弁を用意しておくのもいいでしょう。
ビールをオーダー。プレミアムモルツ。
おつまみ
大宮駅を過ぎてしばらくすると、おつまみとお茶菓子が貰えました。
グランクラスオリジナルパウンドケーキ。加賀棒茶 能登大納言。
おつまみ。「七色めぐり」というあられです。
ダイニングテーブル以外にも、肘掛けにカクテルトレイがあります。ジュースやおしぼりなどちょっとした物を置くのに使えます。
ダイニングテーブルは13インチのノートパソコンも楽々乗るサイズ
この記事用の写真を撮るために、飲み物をどんどん注文します。アップルジュースをオーダー。
日本酒は石川県能登の宗玄酒造の宗玄です。
アイスコーヒー
デッキ
デッキに出てみます。運転席側。乗車・降車時はアテンダントさんがここで出迎えてくれます。途中の駅への到着時、降車客の有無に関わらず、アテンダントさんは必ずここでスタンバイして乗客を出迎えます。
運転席側から見たグランクラス入口。
車両番号「E714-6」。”E7″はE7系(“W7″ならW7系なのでW714)。1はグリーン車・グランクラス、4は先頭車両かつモーター無しの意味で、-6はE714形のうち6番目に製造された車両(F6編成)を表します。
デッキには4枚の飾り柱が飾られています。それぞれ「北陸の四季」をテーマにしたイラストが描かれています。
冬 雷鳥と椿。12号車運転席側。
春。桜とツグミ。11号車との連結部のデッキ。
夏 黒百合と鮎。アテンダントさんの作業場はこの横の扉の中にあります。
秋 松の木。
沿線各地の新聞が並びます。
グランクラスのトイレは隣の11号車に。
11号車のグリーン車とトイレは共用。
11号車のグリーン車をちょっと覗いてみました。
グリーン車は兼六園 成巽閣群青の間をイメージした青色の格子模様が特徴。
なのでデッキも青色です。
なおグリーン車や普通車からグランクラスの立ち入りはできません。見学もできません。別に切符をかざさないとドアが開かないといった仕組みではないので、入ろうと思えば入れますが禁止されています。
長野へ到着
あれやこれやグランクラスを満喫しているうちに、長野駅に到着。乗客のほとんどが降りていきます。金沢延伸開業後「あさま」が、東京-長野間の各駅停車としての役割が強くなったので、東京から長野までの移動は「かがやき」や「はくたか」のほうが早くなりました。また、「あさま」ではアテンダントのサービスもありませんので、グランクラスをフルで楽しみたい長野県民も「かがやき」「はくたか」を利用するようです。
ということで、富山につく頃には乗客は自分だけに。贅沢にもグランクラスを貸切状態でした。
一人しか乗客がいない中、例によって飲み物を何度も頼みましたが、アテンダントさんは嫌な顔一つせず大変丁寧に対応してくれました。
金沢駅に到着
東京を出発してから3時間後、金沢駅に到着。アテンダントさんにお見送りされながらの下車となりました。
よく「1回は乗ってみい」と言われるグランクラスですが、1回乗ってしまうと「もうグランクラス以外乗りたくない」と思わせるほどの乗り心地でした。皆様ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
陸揚げ・陸送、試験走行、駅・車両基地の一般公開、そして開業レポートなどいろいろ北陸新幹線ネタを書いてきましたが、これで新幹線ネタは一段落です。