2019年10月13日、令和元年台風第19号により長野県の千曲川堤防が決壊。隣接する北陸新幹線の車両基地「長野新幹線車両センター」が水につかりました。着発収容線に停めてあった7編成と仕交検査庫内の3編成、合計10編成が水没。水没した編成はF1、F2、F7、F8、F10、F14、F16、F18、W2、W7。北陸新幹線で運用しているE7系・W7系 全30編成のうち、3分の1にあたります。
水没した車両は部品取りされ、廃車を待っています。長野新幹線車両センターの2020年1月3日の様子です。
目次
長野市 赤沼へ
まだ災害の傷跡が残る長野県長野市赤沼へ。車両基地横の「ホクト 赤沼きのこセンター」をはじめ、周辺の飲食店や商業施設は軒並み改装中。台風災害から約3か月が経過しましたが、道路を走ると土煙が舞い上がり、車はあっという間に砂だらけに。
決壊したエリアは「アップルライン」とよばれ、リンゴ畑が広がるリンゴの産地でした。
収穫前のリンゴ畑は冠水、壊滅的な被害を受けました。
あたり一帯が水につかりました。千曲川の決壊箇所から、車両基地はわずか1.5㎞。(航空自衛隊 第501飛行隊RF-4E/EJによる空撮。2019年12月1日 百里基地航空祭にて展示。)
長野新幹線車両センター
幹ナシこと長野新幹線車両センターは、長野駅から金沢方に10㎞の位置にある北陸新幹線の車両基地です。使用していない車両を留置しておく着発収容線が11線。3線ある仕交検査庫で仕業検査・交番検査を実施していました。JR西日本の白山総合車両所とは異なり、台車検査と全般検査は仙台のJR東日本 新幹線総合車両センターで実施しています。
現在は車両基地としての機能はほぼ失っており、長野で実施していた分の仕業検査は白山総合車両所、「東京新幹線車両センター」、栃木県の「小山新幹線車両センター」に割り振り、交番検査は新潟県の「新潟新幹線車両センター」で実施しています。車両を留置しておくこともできず、長野駅や上越妙高駅での留置となっています。
この車両基地をまたぐように道路がかかっており、フェンスの隙間から車両基地を覗くことができます。フェンス越しの撮影となるので、太いレンズだと写真にフェンスの影が写ります。
被災する前は、E7系・W7系が並ぶ美しい様子が話題になり、鉄道ファンには有名な撮影ポイントとなっていました。(撮影:2018年8月)
当時、車両基地の着発収容線にはE7系F1編成、F2編成、F8編成、F10編成、F18編成、F16編成、W7系W2編成の7編成、仕交検査庫にE7系F7編成、F14編成、W7系W7編成の3編成がありました。
着発収容線の7編成が水につかる撃的な映像が、テレビで何度も放送されました。
2020年1月現在、着発収容線の車両は編成をバラして、基地の隅に移動しています。北陸新幹線も、残った車両でギリギリの運用を続けています。
着発収容線には、本線側からF1、F2、F16、F8。手前にはF14。
浮き上がって脱線していたF1編成も、現在は線路上に戻され2番線に移動しています。
臨時修繕庫前にF10。
車輪研削庫奥の車輪研削線にW2編成
仕交検査庫にF7編成、W7編成がいるはずですが、外からは見えません。当時着発収容線上で脱線し大きく流されたF18編成も、現在この中です。1席300万円のグランクラスのシートなど、使えるパーツの取り外しが行われていると思われます。
連結部のカバーが外されているとはいえ、車体に目立った傷やへこみ、汚れは無し。どの車両も今にも走り出しそうで、もう走行することがないとは思えません。
ほとんどの編成が、車内に浸水しシートもひじ掛けまで水没。水没することのなかった電子方向幕は、再利用されます。また、F1編成、F18編成は扉の気密が保たれており、車内への浸水がなかったのでシートなどは再利用されるとのこと。
3か月も走行していないと、パンタグラフや台車は錆や煤だらけ。
せめて先頭車両はどこかしらの鉄道博物館で展示してほしいところですが、輸送費用もバカになりません。泥水に浸かった車両は清掃・消毒・消臭も必要です。
かつて長野新幹線として活躍し廃車となったE2系N編成は、ここ長野ではなく上越新幹線を回送し「新潟新幹線車両センター」で解体されました。もう走行できないE7系は、どこで解体されるのかは発表がありません。
臨時修繕庫の横に仮設の壁が設置されています。もしかすると、ここで解体でしょうか。
水没した10編成の代わりに、上越新幹線に投入予定だったE7系を急遽北陸新幹線に転用。朱鷺色のリボンがラッピングされたF21、F22を除き、F20、F23、F24、F25編成が北陸新幹線の運用にも入っています。2020年1月現在、F27編成まで仙台の新幹線総合車両センターに搬入されています。廃車となる予定だった上越新幹線のE4系は全般検査を実施し、延命します。
車両基地の設備自体も水没。変電所や電源設備、臨時修繕庫、車輪研削庫、確認車とその車庫、すべて水没しました。
車両基地横の高架橋は他の場所よりも低くなっており、一時は本線も浸水しました。
正月だったからなのか、職員の姿はほとんど見えず。長野で検査を実施していたスタッフは、新潟の車両基地などに出張し、検査にあたっています。
周辺のフェンスにも傷跡が残ります。
個々の編成ごとに、様子を見ていきます。
F2,F16,F8編成
着発収容線上にあります。
着発収容線3番線にF2。F2はF18脱線復旧作業スペース確保のため、先月編成をばらして5番線に移動してました。
4番線にF16、5番線にF8。
連結カバーが外されています。移動を待っているのでしょうか。
F1編成
被災時は6番線にあり、車体が浮き上がって脱線していました。先月まで検査庫に入っており、現在は着発収容線の2番線で分割留置。
E7系トップナンバー、最初の車両。神戸の川崎重工から船で仙台にわたり、新幹線総合車両センターに陸送されたのが2013年10月31日。新幹線車両は通常15年~30年ほど使用されますが、6年弱の活躍となってしまいました。
「アップルブリッジあかぬま」からは、4号車の連結部分が見えます。
W2編成
こちらはW7系。JR西日本の車両です。
普段、車両基地ではE7系・W7系を区別せず留置していました。
W2編成は金沢港への陸揚げ、陸送から追いかけていた車両。わずか5年で廃車になるとは、思いもしませんでした。
白山市の白山総合車両所近くに、ビジターセンターを設ける構想があります。そこでW7系の展示が検討されています。「道の駅めぐみ白山」にE2系を展示する計画が無くなった今、ぜひとも実現してほしいところですが、長野から石川県まで輸送は可能なのでしょうか。
F14編成
車輪研削庫の手前。「アップルブリッジあかぬま」の真下にF14編成。当時は仕交検査庫の中にいたようです。
分割留置されています。
グランクラス側
連結部分の配線は、プラグを外すことなく切断されていました。
他の編成と比べて、特に窓が汚いF14。着発収容線より仕交検査庫のほうが標高が低いようで、着発収容線の編成が窓下までの浸水に対して、更に深く水に浸かったようです。
F10編成
F10編成も、移動しやすい単位で編成をバラしたのか、中間車両、先頭車両関係なく連結。
分割留置
臨時修繕庫前の臨時修繕線に並びます。
窓は湿気で曇り、台車がさびていました。