2018年9月17日(月・祝)、石川県小松市の航空自衛隊 小松基地にて「小松基地航空祭2018」が開催されました。
小松基地には2016年6月に宮崎県の新田原基地より「飛行教導群」通称アグレッサー部隊が移転し、約50機ものF-15J/DJ戦闘機が配備されています。航空祭でもF-15を有する3飛行隊の編隊飛行や機動飛行、ブルーインパルスの展示飛行が行われました。去年は台風で中止となったため、2年ぶりの開催です。12万3千人もの来場者が訪れた今年の航空祭。その様子をレポートです。
目次
アクセス
公共交通機関の場合、JR小松駅から北鉄バスが有料のシャトルバスを運行しています。車の場合、小松基地内に駐車場は用意されていませんので、コマツ粟津工場やジェイ・バスがある串工業団地の臨時駐車場、コマニーなどがある鉄鋼団地の臨時駐車場を利用します。各臨時駐車場からは、同じく有料のシャトルバスを利用します。
また、基地向かいの小松空港駐車場は、航空祭期間中は飛行機利用者以外絶対に駐車できません。当日は空港に駐車しようとする車が頻繁にやってきて、警備員に搭乗券の提示が求められ止められていました。周辺道路の違法駐車も、警察が常に巡回しています。
航空祭は周辺のホテルが早々に埋まります。北陸新幹線などを利用し遠方より来場される方は、航空祭の日程発表後すぐに宿を確保しましょう。ここ数年は毎年9月の3連休最終日に開催されます。小松のホテルが確保できなかった場合、金沢周辺で確保すると、観光地や飲食店が豊富です。金沢駅から小松駅まで電車で約30分。それでも空きがなければ、富山や福井周辺を。
当日朝5時半ごろの臨時駐車場の混雑具合。会場に一番違い浮柳地区国有地の駐車場は早々に満車になりましたが、9時頃に串工業団地臨時駐車場が70~90%になったぐらいで、朝早くからすべての駐車場の空きがなくなるといったことはありませんでした。
朝7時30分頃に基地の正門・東門が開門し、入場できます。東門の入場待機列が、RW24アプローチエンドを越えて「こまつ共生の丘」まで約2kmも続いてました。ちなみにブルーインパルス飛行1時間前の12時頃では、待機列は無くすんなり基地に入れました。
入場時、手荷物検査を実施しています。今年は公共交通機関を利用の方に、手荷物検査を優先的に受けて早く入場できるチケットが小松駅構内で配布されました。周辺道路の渋滞を少しでも減らそうとする取り組みです。
会場案内図とタイムスケジュール。7時45分にオープニングフライトが始まり、15時にすべてのプログラムが終了します。
エプロン地区では、多数の航空機が展示されています。また、ここからは展示飛行の様子がよく見えます。今年から脚立と踏み台が一切禁止になりました。
12万人超えの来場者ということで、携帯電話も繋がりにくくなります。トイレも並びます。
飲食店も多数出店。小松市の人口よりも多い来場者に対応するため、そこらへんのグルメイベントよりもお店が集まります。お昼時は混雑します。
オープニングフライト
最初の展示飛行が始まります。7時45分よりオープニングフライトのため、第303飛行隊のF-15J 2機と第306飛行隊のF-15J 1機、T-4 1機が上がります。離陸時間が入場待機列が進み始めた直後なので、多くの方は待機列から離陸を眺めることになりました。
また、この日は南風のためRW24運用。予行ではRW06から上がりTACディパーチャーを披露していましたが、本番では滑走路が逆のためかノーマルテイクオフでした。
離陸後に各機は会場周辺の天候偵察へ。雲の高さを細かく調査し、無線で報告します。前日までの天気予報は、雨マークが付いたり消えたりの予報でしたが、当日午前中は見事に晴れました。
しばらくして会場上空へ隊形を整えて戻ってきます。T-4を先頭にリーダーズベネフィット隊形でフライパス。
デルタ隊形で再びローパス。編成は303SQ T-4 #663、F-15J #821、F-15J #807、306SQ F-15J #958
第303飛行隊 機動飛行
小松基地の第6航空団には2つの飛行隊が所属しています。そのうちの1つ、第303飛行隊「ファイティングドラゴン」の機動飛行です。主に初期型で改修が施されていない「F-15SJ(Pre-MSIP)」を運用しています。
2機のF-15J #885、#859が離陸します。こちらも予行にあったTACディパーチャーは省略。
2機のうち1機は、航空祭のための特別塗装が施された機体です。
F-15SJは全F-15J/DJ約200機のうち、およそ半数を占めます。F-4EJ改ファントムの老朽化・退役が話題ですが、このF-15SJも導入から30年以上が経過し、特になんのアップグレードも行われていないので、実際のところ能力はF-4EJ改とさほど違わないと言われています。AAM-4が搭載できないので、未だにスパロー積んでスクランブルに上がっています。F-35の追加購入で更新が検討されています。
第306飛行隊機動飛行
先程上がった第303飛行隊の2機は降りずに上空待機。もう1つの飛行隊である第306飛行隊「ゴールデンイーグルス」の機動飛行が始まります。主にレーダーや電子機器がアップグレードされ、搭載するミサイルの性能も向上した「F-15MJ(MSIP)」を運用しています。(#803はSJ)
こちらが306飛行隊の特別塗装機。垂直尾翼に勧進帳の弁慶と富樫左衛門が描かれています。小松が歌舞伎の町であることに由来します。
#936。ハイレートクライム、タッチアンドゴー、水平360度ターンなどを披露。
戦闘機の機動飛行は、基本的に人が密集する基地上空は飛行しません。小松空港駐車場や航空プラザあたりを中心に旋回します。そのため背中が撮影したいマニアの方々は、会場ではなく空港デッキや航空プラザ周辺、空港駐車場の歩道や草地から撮影しています。
救難展示
小松救難隊の展示飛行です。捜索機のU-125AとUH-60Jのペアのフライトです。
以前は洋上迷彩のU-125A #027と#028を試験的に運用していた小松救難隊ですが、いつのまにか通常塗装のU-125A #023を運用するようになっていました。
UH-60Jが要救助者のつり上げのデモを行いました。#604は近代化改修が施されたJⅡ型です。
午前中は基地に入らず、すべて空港駐車場から撮影していたため、こちら側からはターミナルビルが邪魔して釣り上げの様子は見えず。
大編隊&アグレッサー機動飛行
航空自衛隊の主力戦闘機とはいえ、F-15が配備されている航空自衛隊の基地は北海道 千歳基地、小松基地、岐阜基地、静岡県 浜松基地(整備員教育用の数機)、宮崎県 新田原基地、沖縄県 那覇基地のみ。なんでもアリの岐阜基地を除けば、本州でF-15J/DJが常に見れるのは小松のみとなります。アグレッサーが小松へ移転したことにより、総数は約50機にもなり、離発着が行われる平日は全国各地からマニアが集まります。
そんなイーグルネストとも言われる小松基地で、303飛行隊4機、306飛行隊4機、アグレッサー2機の計10機編隊が飛行します。10機は離陸後に、隊形を整えるためしばらく会場を離れます。
間延びしないよう、大編隊とは別に更にアグレッサー2機が上がり、大編隊の合間に機動飛行を実施。
アグレッサーは普段各飛行隊を周り、訓練の敵役を努めます。相手のF-15と区別しやすくするため、アグレッサー所属のF-15DJには、カラフルな独特の模様が描かれています。また、訓練によってはF-15で爆撃機役などを演じることもあるので、各機体ごとに塗装パターンが異なります。
ブルーインパルスとは方向性が異なりますが、彼らも精鋭パイロット。航空自衛隊 最高レベルの戦闘スキルと、指導力を有するパイロットで構成されています。この後席のパイロットは、激しいGがかかっているにもかかわらず、こちらに向かって大きく手を降ってます。
敵役を演じるだけでなく、飛行教導群の名の通り、相手部隊に指導を行います。
この#082と#070が、今年の新色です。F-15は定期的に愛知県 小牧基地に隣接する三菱重工で整備(IRAN)が行われます。整備が終わると機体の所属部隊が変わることがあるので、塗装が剥がされます。年に数機が入れ替わり、塗装パターンも変わるので新色が誕生します。
機体全体にヴェイパーがかかるほど、激しい機動を繰り広げてくれました。
大編隊が戻ってきます。10機ものF-15が並ぶ様は圧巻です。福井県の東尋坊のあたりからアプローチしてくるので、東尋坊からもこの編隊飛行が見れます。
2パス目。空港側から撮影しているので逆光。会場からは順光&青空バックで見ることができたようです。
F-4飛行展示
このF-4、改ではなくノーマルのF-4EJです。あと2年ほどで、長年日本の防衛の一翼を担ったF-4はすべて退役し、第5世代戦闘機F-35に置き換えられます。
基地の格納庫では「F-4最終ステージ」なるイベントが行われていたようですが、そのころまだ空港駐車場から撮影していたので詳細は不明。
F-2飛行展示
岐阜基地の飛行開発実験団(ADTW)は各種航空機や兵装のテスト・評価を行う部隊です。そのため航空自衛隊が保有するほぼすべての航空機を有しています。ですが今回飛来したF-2は試作機ではなく、量産機を使用してのデモでした。
F-2、F-4それぞれ小松基地には着陸せず、展示飛行後に岐阜基地へ戻りました。
グライダー
福井空港から日本学生航空連盟のDiamond HK36 JA01KYがアレキサンダー・シュライハーASK21 JA2380を曳航し飛来、会場上空をフライパス。グライダーは切り離さず、福井空港に戻りました。
民間機
小松基地は小松空港と滑走路を共有しています。民間機のトラフィックもそれなりにあるため、途中民間機の離着陸で演目が中断します。逆に、民間機が上空や滑走路手前で待機することも。離着陸の際にはANAとJALが宣伝のアナウンスを放送します。
以前は航空祭に合わせて、ポケモンジェットなど特別塗装機を小松便に割り当てることが多かったのですが、最近はあまりありません。IBEXは福岡便で宮城県のピーアールキャラクター「むすび丸」をデザインしたCRJ-700 JA14RJを運行、JALは航空祭終了後の羽田最終便にてミッキーなどディズニーキャラクターを描いたJALセレブレーションエクスプレスを運行しました。
北陸新幹線開業以前はB747やB777といった大型機が頻繁に飛来していた小松空港ですが、開業後はB737やA320、B767が中心です。
地上展示
午前中の機動飛行がおわり、ようやく基地へ移動。エプロン地区や格納庫で展示されている機体を見て回ります。
今年は航空自衛隊以外の機体が展示されませんでした。米軍、海上自衛隊、陸上自衛隊の機体はありません。
先週は三沢基地で航空祭が開催されましたが、直前に発生した北海道地震の影響で規模を縮小。ブルーインパルスやF-2、初の航空祭展示飛行を予定していたF-35Aなど自衛隊すべての展示飛行が中止となりました。
岐阜基地 飛行開発実験団(ADTW)のF-4EJ
このファントム、基地開門前に岐阜基地から飛来しました。入場待ちの待機列から、着陸の様子が綺麗に見れたでしょう。いくら岐阜基地から小松基地まで15分で到達できるとはいえ、通常前日までに飛来する外来機が早朝に飛来するというのは珍しいパターンです。
先程展示飛行を行った第306飛行隊のF-15J
この機体の番号は本来#803ですが、着陸後に306の数字が貼られていました。
車輪止めには「#平成最後の小松基地航空祭」「#コブラじゃないほう」などのハッシュタグが。先月の松島基地航空祭で第21飛行隊が「#ブルーじゃない方」という自虐タグをF-2Bに貼り付けて展示飛行を行いましたが、流行ってるのでしょうか。
第303飛行隊のF-15J #885。展示飛行を終えて、エプロン地区で展示されます。なお、大編隊や機動飛行の機体は、第303飛行隊がある基地南側の掩体地区から運用しています。
よく見ると迷彩パターンに犬が隠れています。
機体の横ではTVアニメ「ガーリー・エアフォース」の声優 森嶋優花(グリペン)さんと大和田仁美(イーグル)さんの撮影が行われていました。小松基地航空祭とコラボしています。午前中には格納庫でトークショーが行われたようです。
飛行教導群アグレッサーのF-15DJ #081。アグレッサーは主に複座(2人乗り)のDJ型を使用します。DJは後席のスペースを空けるために、コックピット後方の電波妨害装置「J/ALQ-8」を省略しています。そのため外付けの電波妨害装置「AN/ALQ-131」を胴体中央に装着しています。
会場正面には予備機を含むT-4ブルーインパルス7機。人口密度はブルーの前が一番。今年からここには、お子様やその家族の優先スペースが設けられました。
展示飛行フライトを行ったU-125A #023
UH-60J #604。JⅡ型です。受油ロッド付きの機体が増えてきました。
百里基地 第302飛行隊のF-4EJ特別塗装機 #428。最近各地の航空祭へ巡業しています。
百里基地でF-4EJ改を運用していた第302飛行隊が、今年度中にF-35Aへ更新されます。オジロの愛称で親しまれた302SQのファントムも見納め、徐々に退役が進んでいます。
百里基地 第501飛行隊のRF-4EJ #335。偵察機。通称リコンファントム。
小牧基地 第401飛行隊のC-130 #075。松島基地からブルーインパルスの整備クルーを連れて前日飛来しました。4月の瀬戸大橋記念行事のためのブルーインパルスリモート時は支援機がC-2でしたが、今回はC-130Hとなりました。
そんな地上機を見やすい花自動車。F-15の北陸新幹線塗装 “kagayaki ver”。
#830。油圧作動展示。F-15Jのギアやフラップ、エアブレーキの動きを、整備さんたちが説明します。
F-15 #868と#094 2機を使いコックピット展示。SJとMJのコックピットの違いを見比べるのも面白いかもしれません。このアグレスの機体、IRAN明け直後なのでまだ通常塗装ですが、後日塗装が施されることになるでしょう。
AIM-7やAAM-4などのミサイル、500LB爆弾の展示。どれも訓練用です。爆発しません。
アグレッサー交流ブース。アグレスのパイロットのみなさん。優しそうな方々ですが、世界屈指の戦闘機パイロットです。
アグレッサー各塗装の人気投票が行われていました。
赤色の#082、青色の#090が人気を集めています。
#081が後を追います。
パイロットによる各国の戦闘機の解説。エースコンバットネタ多め。
ブルーインパルス
午後、ブルーインパルスのアクロバット飛行が始まります。日中は晴れ空が広がっていましたが、残念ながら午後には曇ってきました。前半は2区分、後半は3区分のフライトとなりました。
今回の割当は1番機 #690、2番機 #787、3番機 #730、4番機 #731、5番機 #790、6番機 #666、予備機 #692。ブルーインパルス初期からのT-4は#730、#731のみ。あとは小牧基地でモスボールされていた通常のT-4を、スモーク発生装置やキャノピーの強化といった変更を加えブルーインパルス仕様に改造した機体。新造機としてブルーインパルスに納入された機体は、通常のT-4と比べて激しい機動を行うことが多く、徐々に退役が進んでいます。#720と#727は墜落。#804は水没。#725、#726は去年退役。#728、#729は今年退役。
パイロットがコックピットへ搭乗する「ウォークダウン」を見るためには、エプロン最前列を朝一で場所取りする必要があります。ウォークダウンやタキシング以外は大空を飛び回りますので、エプロン地区ならどこから見ても大差ありません。子連れの方で、1日中基地に滞在するのが辛いと言う方は、場所取りなどは特に不要なので昼頃に来場しても問題ありません。
1~4番機はダイヤモンドテイクオフ&ダーテターンはせず、インディビジュアルテイクオフ。どうも最近ダイヤモンドテイクオフは封印された模様。5番機、6番機がローアングルキューバン&オールオンテイクオフ。一気に上昇していく5番機に会場から歓声が上がります。
ファンブレイク。2年ぶりのブルーインパルス展示飛行。2年前も天気が悪く5区分(途中4区分)だったので、通しのアクロバット飛行は3年ぶりです。
スラントキューピッド。通常は垂直にハートを描きますが(バーティカルキューピッド)、天気が悪く雲が低い時は斜めにハートを描きます。
以上でフライト終了となりました。なお、9月29日(土)には福井国体の開会式でブルーインパルスの展示飛行が予定されています。おそらく小松基地からのリモートとなるので、また来週ブルーインパルスが小松基地に飛来するでしょう。
外来機帰投
展示のために飛来していたT-400、F-2A、F-4EJが、それぞれの基地へ帰投します。
帰り
15時。ブルーインパルス終了後、各駐車場や小松駅方面へのシャトルバスは、長蛇の列となります。2時間以上の待ち時間になりました。
タクシー待ちもこの通り。小松駅まで歩いて50分なので、元気があれば歩いたほうが早く帰れるでしょう。歩けば16時台にはJR小松駅に戻れますから、北は青森、南は鹿児島までその日のうちに帰宅可能。
2年ぶりの航空祭、大勢の来場者を魅了しました。